卸売市場会計の独立採算②

市場会計は資本的収支と収益的収支に分かれていて、独立採算の考え方の基本は、使用料収入を中心にした収益的収支の部分です。もちろん管理支出には、許可や届け出など行政の専権事項もありますので、全てが使用料を原資とするのではなく、上限30%までを一般会計から繰り入れることが認められています。(総務省一般会計繰り入れ基準)。

使用料の前に、公営企業会計の対象となる地方公営企業について簡単に振り返ります。

明治22年の市制町村制が発足していらい、明治25年の横浜市営ガス事業、東京市の路面電車(明治44年)、高知県営電気事業(明治42年)など、相次いで地方公営企業事業が取り組まれています。

 これは、いずれも住民の福祉の増進を第一義的な課題として取り組まれたものです。

例えば飲料水の汚染による伝染病の発生は明治以降も続いていたため上下水道の整備は緊急課題でしたし、鉄道や電気も都市発展に不可欠な都市基盤の整備です。

当然、そこには公営企業だから独立採算であるという考え方はありません。ただし無料でもありません。「直接的な受益者」はサービス提供の対価を支払わなければなりません。サービス提供の対価であって独立採算という企業経営上の原則ではないことは明らかです。

 

 東京都の資料で説明されている地方財政法第6条は公営企業の経営について「特別会計を設けてこれを行い、その経費は、その性質上当該公営企業の経営に伴う収入をもつて充てることが適当でない経費及び当該公営企業の性質上能率的な経営を行なつてもなおその経営に伴う収入のみをもつて充てることが客観的に困難であると認められる経費を除き、当該企業の経営に伴う収入をもつてこれに充てなければならない」と規定しています。これが公営企業会計の原則なのです。「能率的な経営を行ってもなお無理な経費」を除いて独立採算をめざしなさい、という考え方で、十分に説得力のある方針だろうと思います。

 

 この考え方を「公営企業は独立採算が原則」と要約することは無理ではないでしょうか。

電気、水道等の歴史を見ても明らかなように「独立採算が原則で、それに一部補助」ではなく、「公益事業だから無料、というわけではなく効率経営を行っても無理な部分は行政負担とするが、受益者(消費者)も一定の負担をすべきである」と解釈する「公益の行政責任事業だが、受益者も一部負担すべきである」と受け止めることが立法趣旨であることは明らかです。