卸売市場会計の独立採算①

 豊洲市場の使用料をめぐって損失補償、開場延期中の施設管理費用を誰が負担するのかの論議が続いています。初めに、市場会計は業者使用料を中心とした独立採算が原則であるという考え方について検証します。

 市場会計の立採算の法的根拠が地方自治法に基づく公営企業会計法です。損失補償をめぐる東京都の説明でも述べられていますが、ここでは平成13年に出された「東京都中央卸売市場使用料検討委員会」報告書が、市場使用料に関する基本的な考え方が以下のように分かりやすく述べられています。

①市場事業は、地方財政の一般法である地方財政法により公営企業として位置づけられ、市場事業の経営は特別会計を設け独立採算で行うことが原則とされている。

 

②地方公営企業法は、地方事業について任意適用事業としており、これに地方公営企業法を適用するかどうか否かは、事業を経営する地方公共団体の判断に任されている。東京都の場合は一部適用している。そして地方公営企業法は、地方財政法第6条の独立採算制の原則をそのまま採用している。従って、市場事業の経営に要する経費は、基本的に市場事業に伴う収入をもって充てなければならない。

 

 これを読むと、公営企業が独立採算で運営するのは当然の原則であるように思えます。

しかし地方公営企業は最初から独立採算の考え方で事業活動に取り組んだわけではありません。それは容易にわかることで、電気やガス、水道、鉄道などが最初から独立採算の原則で料金設定を行っていたら、途方もない料金になったでしょう。

 

 地方公営企業法が制定されたのは昭和27年ですが、独立採算の原則は地方公営企業の慢性的赤字を改善する財政再建制度のための一部改正がなされた昭和41年からです。それも財政再建対象事業である電気、ガス、水道、鉄道など法定七事業と病院事業に限定されています。

 

 日本経済の高度成長が始まった昭和35年ころから都市基盤整備が進むとともに財政負担が膨張し、地方公営企業法を適用している企業の累積赤字は、昭和38年度376億円、昭和39年度659億円、昭和40年度948億円と倍々の比率で増え続けました。その元凶である電気、ガスなど7事業を何とかしないと自治体財政そのものが破たんするという危機感が一気に拡大したために昭和41年に法改正し、その際に独立採算の考え方が導入されたのです。それも完全独立採算ではなく受益者である消費者の料金値上げを行う根拠としての「独立採算」なのです。