大阪東部市場 コメ卸が青果卸買収

米穀卸の最大手「神明」が大阪市中央卸売市場・東部市場の青果卸「東果大阪」(重田秀豪社長)の全株を取得したと発表した。

 神明は年商1200億円の米穀事業を展開しており外食、中食などのグループ企業を通じて青果市場とも関係を深めていた。コメの消費減退やTPPによる自由化等に対応し米穀卸売業を軸とした事業の拡大をはかっており、その満を持した第一歩となる。一方、東果大阪は年商420億円を売り上げる全国青果卸17位の大型卸で中央市場の単一卸として安定した経営を維持してきた。   

 今までも大手量販店が中央市場の卸を買収したケースなどあるが、経営悪化による譲渡が多く、今回のように400億円を超す売上があり、大消費地市場の単一卸として健全経営を維持している卸の全株を、役職員も寝耳に水という状況で譲渡したケースはない。

 神明の狙いは明確である。2月27日に発表された神明ニュースリリースは『当社と東果大阪は、米穀と青果という違いこそあれ、両社が協力して「産地との強固な連携による集荷力強化」、「マーケットインの発想による販売力強化」という共通課題に取り組む』と買収の目的を述べている。

 2月からの通常国会に提出されている農業競争力強化支援法(支援法)は直接的に触れていないが、支援法の母体となった強化プログラム、規制改革推進会議では、全農、卸売市場の流通効率化が最大の課題となっている。

 卸売市場では取引の全面的な規制緩和など「市場法の抜本的な見直し」が検討されており、花き流通が公設市場として整備された時以上に、コメ流通と青果流通のドッキングは相乗効果が期待される。 強化プログラムは「中間流通(卸売市場関係業者、米卸売業者など)については‥業種転換等を行う場合は‥支援を行う」と述べており、米穀卸と卸売市場はともに減少するという前提の施策(政策的に減少方向を打ち出す)中間流通の代表として名指しされており、その両者のドッキングは支援法の方向性を象徴的に示すものであり、市場法の抜本見直しの前の先取りである。

 神明グループ9社の中には中国、アメリカでの企業や「元気寿司」チェーンも入っており、すでに水産物も一部市場を通して仕入れている。今後、経営形態がどうなるか不明だが、コメを軸に青果、水産を含めた総合卸として市場流通に参入する可能性もあり、この後も新しい形の流通再編は進むだろう。