奈良市場冷蔵が冷食米飯進出

第3セクター企業「奈良市場冷蔵()」(社長・浪越照雄 奈良県副知事)と冷食大手の「トーコー(株)」(川崎勝裕社長)、さらに金融機関3社が支援し設立された新会社「真秀(まほ)コールド・フーズ」(資本金4,300万円、竹田善司社長、以下まほコールド)は3月、冷食炒飯・冷ピラフ・冷おにぎりの冷食米飯新工場を建設、竣工した。4月から本格稼働する。初年度売上は2,510㌧の生産、販売を見込んでいる。寡占化されている冷食分野に中央市場の冷蔵庫会社が参入するケースは市場流通では初となる。

「まほコールド」新工場は奈良県五條市に建設された。敷地面積15,983㎡、工場面積5,740㎡で3,243㌧の移動ラック型保管庫がある奈良県最大級の冷凍食品工場。

 奈良市場冷蔵は出資していないが、「まほコールド」の経営陣にはCEOはじめ社長以下6人の役員が入り奈良市場冷蔵主体の経営となるなど経営管理は奈良市場冷蔵が行い、営業面は「トーコー」が行う。

 コメの生産調整撤廃やTPP等による稲作農家の環境が大きく変化することが予想されている中を、奈良県が49%を出資する「奈良市場冷蔵」を母体に市場外で冷凍米飯事業に乗り出すことで市場活性化、奈良県生産者農家支援をめざす。

 新工場は南都銀行、政策金融公庫、商工中金の三金融機関が36億円の協調融資を実行、国、奈良県、五條市の支援も受けて官民一体の支援スキームが構築されている。

 冷食市場規模は約7,000億円でそのうち冷凍米飯類は約430億円。冷食市場に占めるシェアは少ないだけに成長性は見込めるのだが、市場は大手4社(ニチレイ、味の素、マルハ。テーブルマーク)に寡占化され5割引等の低価格が常態化していることもあって新規参入は難しいが、一方ではTPP対応や輸出振興、農業生産者の所得向上めざす規制緩和等ビジネスチャンスは広がっており、市場流通の低迷で冷蔵事業の多角化を狙う両社の経

営戦略は一致している。CEOに就任する伊藤珠樹氏は奈良市場冷蔵取締役所長(元ニチレイロジ高槻物流センター所長)で竹田社長は奈良冷蔵取締役総務部長、トーコーからは川崎社長はじめ5人が取締役となる。またトーコーは、三菱食品との関係が強く、JA・経済連を通じて仕入れ・販売ルートが確立されており、当面、原料は全量トーコーを通して調達する。コメ卸と市場卸はともに効率化の課題に直面しており、コメの販売・消費拡大、奈良市場の経営戦略等様々な相乗効果が期待されている。